にこ📚

人生は物語。

深夜静かに、やさしい気持ちになりたい時に読む本

毎日悲しいニュースや辛い現実が目の前にある私たち。

悲しくて辛いことが多すぎるから、心も次第にとげとげしてくる。自分にも他人にも優しくなるなんてなかなか難しい。

 

そんな時に、悲しみを問い直し、生死を問い直し、心を落ち着かせてくれる本をご紹介します。

 

想ー像ーラジオー!

 

 

 

本紹介

3.11と「死」

DJの一人しゃべりが中心に進む「ラジオ番組」。

読み進めていくうちに、だんだん、この物語が3.11後の東北を舞台にしているのだと分かってきます。

軽快なしゃべりとは裏腹に、DJの状況が分かってくるにつれてどんどん胸が締め付けられ、リスナーの「おたより」からも、当時その場にいなかった私にはまさに"想像"もできないリアルすぎる状況が見えてくる。

 

震災では多くの方が亡くなり、今でも昔の家に戻れていない人もいる。いつかその時は来るけれど、「死」と向き合うことはいつだって、誰にも準備ができていないことなのではないでしょうか。

 

わたしたちの想像力

しかし、この本を最後まで読んだ後に出てくる感情は、「辛い」とか「重い」とかではなかったんです。むしろ、「死」との向き合い方や、「悲しい」という感情について、「忘れ去って前を向け」ではなく「忘れないで共に、ゆっくりと前へ進め」だった。

 

そして、忘れないためには「想像」が必要である、と。

想像を働かせることで、あの人だったらこう言うだろうな、とか、こう行動するだろうな、というのがなんとなく分かる時ってありますよね。それは身勝手でもなんでもなく、私たちの素晴らしい想像力がなせる、死者と共に進む力なのではないかと思いました。

 

これは何も震災のことだけに当てはまるメッセージではなく、むしろ、死別や離別は生きていれば誰でも直面します。だから、私たちみんなに向けたメッセージなのだろうな、と私は受け取っています。

 

「いつまでも引っ張るな」とか、「悲しみから抜け出さなくてはいけない」とか言うけれど、そんなことする必要はなくて、むしろ悲しみ続け、想い続け、想像し続けたい。たとえ可哀想と思われても。

 

さいごに

ガツンと前向きにさせてくれるというよりも、想像する余裕を心に持たせてくれるそっと背中に手を当ててくれる、そんな本でした。

「深夜静かに」と書いたのは、私がラジオと言えばオールナイトニッポンでしょ、というド偏見を持っているからです(笑)

 

始めての本紹介、緊張しましたが、時間をかけて書きました。心に届き、一人でもほっとしてくれる人がいたら嬉しいです。