浄化される言葉で自信がつく「羊と鋼の森」
タイトルだけ聞くとファンタジー?と思ってしまいますが、「羊」と「鋼」、そしてその「森」である、ピアノを中心に、主人公の成長や劣等感の乗り越えなど、全ての人に当てはまる悩みに寄り添うような物語です。
他人に引け目を感じたり、自分なんて、と思っている人にこそ読んでほしい一冊です。
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センスは必要か
主人公は、ある経験から調律師という仕事に魅せられ、ついに自分も調律師になりますが、学校を卒業して働くことになっても自分のセンスのなさに落ち込み、自分がどれほどできないかを先輩と比べ常に劣等感を抱いています。
私は同じような経験が多く、何をするにしても自分よりできる人、自分よりセンスがあって何倍も早く吸収していく人を目の前にして、諦めてしまうことがよくあります。
むしろ、自分より「すごすぎる人」を前にしてそれでも続けられる彼がすごいとさえ思ってしまうのですが、やはり、初めからできる人はいない、に尽きるのではないかとこの本を読んで思いました。
もちろん、調律師という仕事はセンスが求められる仕事ではあると思います。ただ音を合わせれば良いというわけでもないようなのです。それに、彼の仕事場には元ピアニスト志望の人や、海外のピアニストから指名されるような本当に「すごい人」が間近にいます。
でも、それでもしがみつくことに意味がある。向いてなくても、センスがなくても、必死にしがみつけば、気付いた時には周りから評価されているのです。
一度、周りの目や自分自身の自分への評価を無視して、やってみる!精神が大事なのだと気づかされました。
すぐ諦めたりかっこ悪いことを避けてしまう私ですが、できなくても向いてなくても、まずやってみる、続けてみる、何に関しても同じことだなと思います。
自分は恵まれていると考える
主人公やピアノの経験やクラシックへの親しみこそないですが、彼の生まれた土地は自然が豊かで、羊などの動物や森も身近なものだったのです。少し遠めでも、ピアノとの繋がりがあったということです。
例えばそのようなめぐり合わせで今の自分の選択があるのかもしれません。自分には何もないと思っていても、やはり生まれ育った土地や経験は他の人にはない唯一無二のものなのかもしれません。
自分の経験に劣等感を感じるよりも、自分が恵まれていた経験を思い起こすこと、自分にしかないものは必ずあり、それを見つけることで自信もつき、「確固たる自分」が見つかるのではないかと感じました。
直感に素直になる
主人公が調律師を志したきっかけはほんの一瞬でした。一瞬でも自分の心の大きな動きで自分の選択が決まるなんて、そんな素晴らしい経験はないと思います。
自分の感度を磨き続けたら、いつきっかけがきてもピンと来て、すぐ行動に移せるのかもしれません。そしてきっかけが来たら素直になり、余計なことをせず飛び込む勇気も必要です。
自分の人生において心から幸せなことは、心が常に動いていることだとこの本から感じました。心の動きに敏感になり、自信のなさは一回忘れて、「やってみよう!」と思える作品です。