アドレナリン吹き出す青春小説「武士道」シリーズ
まっすぐ生きているか。自分の軸をぶらさず生きているか。
自分の進むべき道に迷ったり、自分がしてきたことが全て無意味に思える。自分は薄っぺらい人間なのではないかと思える。
人生の中で迷いはいつでもついて回り、結果は簡単には出ない。
悩んでいる時、「なにくよくよしているんだ」と、そして、「大丈夫、楽しもうよ」と引っ張り上げてくれる、
誉田哲也さんが描く「誰も死なない青春小説」とよく語られる本3部作、武士道シックスティーン、セブンティーン、エイティーン。
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※一番下に3部作のリンクをまとめて貼っておきます。
真反対の性格をした2人の剣道JKの青春を描いた本作、なんと書いたのはストロベリーナイトなどのミステリーで有名な誉田哲也さん。私にはどうしても同じ人物が描いた作品とは思えません!そしてこんなにもJKの心情を描けるなんて信じられません!(笑)
「剛」の香織、「柔」の早苗の二人の心構えや言葉に、何度も心を動かされ、読んだら人生へのアドレナリンが溢れ出すこと間違いなしです。
見出しが秀逸
香織目線、早苗目線で交互に物語が進んでいきます。このような構成の小説は他にもたくさんあるけれど、私はこの進み方、すごく好きなんです。
片方の語りでは見えていない景色がもう片方の語りでは見えたり、「この話している時この子こんな顔してたんだ」とか、「あんなこと言われても意外とダメージ受けてないんだこの子」とか。別の人の目から見た同じ景色を描くというのがとても面白いです。
香織、早苗以外の語りが登場する場面もあり、それもまた謎が解けていく感覚があり面白かったです。
このような交互の語りが好きな私ですが、特に本作は見出しから個性が溢れている!
香織はだいたい漢字3~4文字の熟語、早苗はひらがな多めの一文。香織の年齢不相応な剣道オタク感、早苗の柔らかくポジティブな感じが見出しから完璧に表されている。見出しだけでも見て欲しいくらいです!(笑)
二人の出会いが為す化学反応
誰がどう見ても真反対な性格をしているふたりの出会いがお互いの人生にものすごい影響を与えていきます。これって、どんな出会いも当たり前のことのように見えるかもしれないけれど、真反対の人と出会って、それを受け入れて、そして自分に取り込んでお互いが高め合える関係って、実は築くのが難しい。
なにせ、不器用なまでにまっすぐで怖い雰囲気の香織と、人当たりが良くてふわふわとしている早苗だから、きっかけ次第では仲良くならなかったかもしれない。
そんな二人が絆を結べた時、他の出会いよりも大きく、お互いを影響し合えたのだと思います。
二人は自分の軸を改めて見つけることができたし、お互いのいいところを自分に取り入れることもできた。
お互いに影響を受けて変わっていっているところや、お互いの性格の理解など、くすくすっと笑ってしまうかわいい変化も魅力的です。
お気楽不動心
早苗について、香織はしょっちゅう、「お気楽不動心」と言います。それ、すごく早苗にぴったりだなと思うのです。
周りと比べた自分の立ち位置を冷静に客観的に見ていながらも、「私今調子いいかも」とか、「勝っちゃった。ラッキー」とか、とにかく楽しそうで、とにかくネガティブな言葉はなかなか吐かないのです。
それはなぜかというと、周りと比べてどうとか、勝ち負けとか、彼女はそこに重要度を置いていないからだと思います。
それって人生において大切なことではないでしょうか。
自分が納得できているか、自分が好きなことか、自分が楽しいと思ってやっているか、昨日の自分より良くなっているか。そして、他人へは感謝をする。
そのような考え方や生き方を、私はしたいと思うし、それができなければ自分は幸せにはなれないと思うのです。
意味を考えるよりまず先に、好きか、楽しいか。
人生とは武士道
他のスポーツをしていると、勝つために相手チームを研究したり、ルール内で可能な限り勝ちに近づく技を磨きあげたりするのは、割と当たり前だったり、それが努力とされる部分もあるように思います。
しかし、二人はそのような剣道を嫌い、「勝つためにはなんでもする」は卑怯だと、それは武士道ではないと言います。
この価値観は別のスポーツをやっていた私からすると、なかなか自分とは遠い価値観でした。しかし、それが彼女たちの「武士道」で、彼女たちの剣道に対する絶対にブレない軸であると感じました。
これだけは譲れない、これは絶対に嫌だ、周りがどうだろうと。
頑固さが可能性の邪魔をすることも時にはあるけれども、それでも絶対譲れない根底が、人生の指針になっていっているようでした。
この作品はティーン向けだとかそんなことは全くないと、何度も読み返しても思います。もちろんとても読みやすいので若者に好まれると思いますが、武蔵や道場の人たちの言葉、父の言葉、二人の根強さなど、人生に対して「頑張るぞ!」と無条件に思えるエネルギーが詰まっています。
何に対して、ではなく、もう人生に対してアドレナリンが大量噴出するこの作品に出会えて、本当に良かったです。
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3作まとめ↓
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